邪心なく真っ直ぐ。ASIAN KUNG-FU GENERATION
- Tour:「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2018『BONES & YAMS』
- Date:2018.07.11
- Front Act: Nick Moon
- 新木場StudioCOAST
新木場StudioCOASTは結構好きなライブハウス。
大型トラックが轟々と通る車道の脇を辿って橋に出ると、川の向こうに音符マークデザインの電飾が見える。日常から少しずつ離れて、ワクワクする世界へ辿り着く感じがたまらない。
川から放たれる7月の湿気を全身に纏って、ライブハウスの中へ。
集まった人々は様々な種類の「アジカン」Tシャツを着て、ラフなパンツ&スニーカー、首元にはタオル、というスタイルでいる。
雲の上の人に会う!とかいう高揚ではなく、昔から知っているアイツに会いに来る、とか母校の学園祭に来る、とかいったような不思議なホーム感が満ちていて、初参戦(しかも独り参戦)の私も心地よい。
前座で現れたNick Moonの愛すべきパフォーマンスで会場が温まった後、アジカンのメンバーが「ぞろぞろ」という感じで暗いステージに現れると、観衆は「ごっちー!」「なんとかー!」とか好き好きに声を掛ける。
久しぶりの友人に会うような、ぶっきらぼうだけど温かく、照れくさそうな歓迎に、会場全体がなんだかニヤ付いている。
ニックムーンの作ったフワフワした空気が、アジカンの野太い演奏で一瞬で上書きされ、グングンと昇るようなロックが始まった。昇り竜が音を発する。
「アジカンのライブに外れはない」と言っていた知人の言葉に、心のなかで大きくうなずく。
立て続けに曲をやった後、ボソボソした低い声で、MCが始まる。着ているシャツに自分で突っ込んだり、その日リリースされた他のバンドのニュースなどに自虐的にコメントしたり、そのバンドの復活に喜びのコメントを表したり、と、シニカルでニヒルだけど、温かく親しげな言葉に、ライブハウス中が笑顔になる。
Gotchが「フェスでは『リライト』やっている間は人が立ち止まってくれるけど、終わると歩き始めちゃう」とか、昨今の業界がCD販売ではくストリーミング配信が主流になってきている話をしながら、「自分らの曲が無料で人に聴かせることができたら、絶対に好きになって貰えると思っていた、ビートルズみたいに。」っとかって弱音を吐いた後、
「でも音楽はね、聴く人のものだから、絶対。」って。
こんな青臭いセリフを呟くように言うものだから、不惑の齢を過ぎた私も胸が熱くなってしまった。
こんな風に真っ直ぐに音楽に向き合って、邪心なく聴く人に差し出してくれるって。新卒青年のような正論をポロリと言える40代男子、自分の歪みや汚れがリフレクトされて、惑ってしまった。
結局「リライト」は演らず(これが子供っぽい頑固さだと思うのよ。愛すべき点よ)、アンコールには、再びニックムーンをステージに迎えてRadioHeadのHigh&Dryを演った。世の中がHigh&Dryに酔いしれていたころ、それはアジカンのデビューしたころだ。原曲にとても忠実に響くHigh&Dryを聴きながら、やっぱり私は久しぶりに同級生の隣に立っているような錯覚から逃れられなくなっていた。
<Set List>
- Right Now
- エントランス
- 荒野を歩け
- 白に染めろ
- 極楽寺ハートブレイク
- マイクロフォン
- サイレン
- 無限グライダー
- 永遠に
- ノーネーム
- 未だ見ぬ明日に
- 架空生物のブルース
- 生者のマーチ
- 夜を越えて
- サイエンスフィクション
- ローリングストーン
- Re:Re:
- Standard / スタンダード
- ワールド ワールド ワールド
- 新しい世界
アンコール
- High and Dry (with Nick Moon / Radiohead cover )
- マーチングバンド
- 今を生きて
- 転がる岩、君に朝が降る
▼この日、演った曲で好きな曲
▼結局みんな大好きな曲
▼心に爪痕を残す名曲